「介護の現場には、ダイヤモンドのような善意があふれています。でも、その善意だけで組織を動かそうとするから、みんな窒息してしまうんです」

株式会社Nuevo Labのシニアコンサルタント、”博愛のジャックナイフ”こと塩田昌弘は、静かに、しかし鋭く語る。 人に頼まれたら断れない、困っている人がいたら放っておけない。そんな「優しすぎる」人たちの集まりである介護現場。その美徳が、皮肉にも現場をパンクさせる最大の要因になっているとしたら——。

必要なのは、根性論でも増員でもない。現場を劇的に変える「レバレッジポイント」を射抜くことだ。

【目次】

  1. 「断らない優しさ」が招く、現場の窒息
  2. 仕組みという名の「愛」:レバレッジポイントを可視化する
  3. 善意を「成長」のエネルギーに変換する急所
  4. 本来やりたかったことを、やらせてあげるために
  5. 執筆者プロフィール

1. 「断らない優しさ」が招く、現場の窒息

介護の現場には、素晴らしい想いを持った人たちがたくさんいる。 入居者の笑顔が見たい。誰かの役に立ちたい。そんな純粋な動機で、彼らは日々、自らを削って働いている。

しかし、その「協調性」や「優しさ」には、あるリスクが潜んでいる。それは、「頼まれたら断れない」ということだ。 誰かが欠ければ、残った誰かがその穴を埋める。無理をしてでも、笑顔を作って対応する。その優しさだけで全てを動かしてしまったら、現場はやがて限界を迎え、パンクしてしまう。

善意に依存した運営は、個人の自己犠牲を前提とした「砂上の楼閣」なのだ。ここを放置したままでは、どんなマネジメント理論もレバレッジポイントにはなり得ない。


2. 仕組みという名の「愛」:レバレッジポイントを可視化する

だからこそ、Nuevo Labは「レバレッジマップ」を現場に持ち込む。 これは、冷徹な効率化のツールではない。むしろ、現場の優しさを守るための「地図」であり、真の改善をもたらすレバレッジポイントを見極めるための儀式だ。

今回、私たちがエリアマネージャーと共に取り組んだのは、膨大な業務の連鎖の中から、最小の力で最大の結果が出る「急所」を特定することだった。 マネージャーが現場の穴埋めに走るのを辞め、施設長をサポートする。その決断こそが、組織全体を動かす最初のレバレッジポイントとなった。


3. 善意を「成長」のエネルギーに変換する急所

本当のレバレッジポイントは、現場の中ではなく、現場の「リーダー」の意識の中にあった。

施設長が最も苦手とし、かつ後回しにしていた「スタッフ一人ひとりの目標設定」。ここをエリアマネージャーが横で一緒に考えてあげること。それだけで、組織の詰まりが一気に解消されたのだ。

仕組みを入れることは、冷たさではない。むしろ、現場の善意が空回りせず、正しく価値に変わるためのレバレッジポイントを明確にすることだ。

スタッフたちは、単に「楽をしたい」わけではない。 「入居者の笑顔が見たい」「その中で自分も成長したい」という強い欲求を持っている。その欲求を現実に変える急所こそが、適切な目標設定と、それを見守る仕組みだった。


4. 本来やりたかったことを、やらせてあげるために

離職率の大幅な削減。それは、単に待遇が良くなったからではない。 レバレッジポイントを正確に射抜いたことで、スタッフが「本来の自分たちの良さ」を、仕事を通じて発揮できるようになったからだ。

自分の成長が、入居者の笑顔に直結している。 その実感という名のレバレッジポイントを手にした現場は、誰に言われるでもなく自走し始めた。

「ジャックナイフ」塩田は、今日も現場で問いかける。 「あなたのその優しさを、消耗ではなく、輝きに変えるレバレッジポイントはどこにありますか?」

介護の現場に、本当の「笑顔」と「誇り」を取り戻す。 Nuevo Labの挑戦は、まだ始まったばかりだ。


現場を支えるプロフェッショナル

塩田 昌弘 / Masahiro Shiota Senior Consultant

18年に及ぶ大手飲食チェーンでの現場経験を通じ、誰よりも「現場の痛み」を痛感してきたスペシャリスト。人財開発コンサルタントへ転身後は、NVC(非暴力コミュニケーション)や成人発達理論を「現場の泥臭いプロセス」に落とし込む独自の手法を確立。その鋭くも温かいフィードバックの姿勢から、顧客には”博愛のジャックナイフ”と呼ばれている。


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執筆者プロフィール

寺澤 のぞみ / 株式会社Nuevo Lab 代表取締役 不動産ベンチャー、人材開発コンサルを経て株式会社Nuevo Labを設立。現場に密着した伴走支援を通じ、指示待ちから脱却した「自走する組織」を数多く創出してきた。製造・飲食・介護・保育など、多くのスタッフを抱える現場の組織変革を専門とし、対話を起点にした人材育成と組織OS構築を支援している。