「その根拠は?」「データはあるのか?」「リスクはどう管理する?」
会議室で飛び交うこれらの質問。一見、プロフェッショナルで健全なビジネスコミュニケーションに見えますが、こと新規事業や変革の現場においては、これらが「ブレーキ」として作用することがあります。
今、リーダーに求められているのは、勝敗を決める「ディスカッション」ではなく、共感を生む「ダイアログ」へのシフトです。
1. ディスカッションの限界:「何が正しいか」の奪い合い
多くの企業で行われているのは「ディスカッション」です。その目的は、論理やデータを用いて「何が正しいか」を決めることにあります。
特徴: 根拠、ファクト、論理的整合性の追求。
視点: リスク回避、ガバナンス、失敗の排除。
結果: 既存の延長線上にある「手堅い案」だけが生き残り、尖ったアイデアは削ぎ落とされる。
特にリスク回避志向の強い経営陣は、「想定外」を恐れるあまり、まだ形になっていない新規事業の芽を論理の刃で摘んでしまいがちです。
2. ダイアログの価値:「私たちはどうありたいか」の共創
一方で、新たな価値を生み出すために不可欠なのが「ダイアログ(対話)」です。これは、正解を競うのではなく、お互いの背景や世界観を理解し合うプロセスです。
特徴: お互いの「なぜ(背景)」を聴き、共感の接点を探る。
視点: 新たな意味の発見、心理的安全性の構築、未来への共創。
結果: 役割を超えた信頼関係が生まれ、一人では辿り着けなかった「第三のアイデア」が湧き出す。
項目
ディスカッション(議論)
ダイアログ(対話)
目的
正解の決定、説得、勝敗
相互理解、意味の共創、新たな気づき
必要なもの
データ、論理、証拠
問い、聴く姿勢、自己開示
中心にある問い
「何が正しいか?」
「私たちはどうありたいか?」
3. 新規事業担当役員に求められる「弱さ」と「共感」
新規事業の成功を左右するのは、担当役員の「ダイアログ」の姿勢です。
イノベーター側の想いを「論理」で裁くのではなく、まずは徹底的に「聴く」こと。そして、役員自身もまた、一人の人間としての本音をさらけ出す必要があります。
背景の共有: 「なぜ、自分はこの事業を成功させたいのか」
不安の開示: 「実は、今の市場の変化に対して私自身も焦りを感じている」
経営陣が自らの葛藤や想いを「ダイアログ」を通じて開示することで、現場の担当者との間に「この事業を共に進めていこう」という強固な合意(コミットメント)が生まれます。
4. 「ディスカッション」しかできない人は、リーダーの座を降りるべきか
厳しいようですが、論理とデータで相手をねじ伏せる「ディスカッション」しかできない人は、新規事業のリーダーには不向きです。
正解のない領域に挑むとき、羅針盤になるのはデータではなく「人々の熱量と信頼」だからです。
リスクやガバナンスを問う前に、まずは相手の世界観を尊重し、背景を理解する。そんな「ダイアログ」の場をデザインできるリーダーこそが、組織の中に眠っているイノベーションの種を、大きな事業へと育て上げることができるのです。
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