「どれだけ手を打っても、現場が動かない」 「改善活動を繰り返しているのに、利益率が上がらない」
多くの経営者が抱えるこの悩み。実は、努力の量が足りないのではなく、「叩いている場所」がズレているだけかもしれません。
私が伴走した東海地方の製造業の事業部長、A氏。彼は、組織のどこに「テコ」をかければ全体が動き出すのかを見極め、最小の力で最大の変化を生む「レバレッジポイント」を的確に叩いたリーダーでした。
彼が引退を前に断行した「赤字事業からの撤退」と、その後の組織の劇的な自走劇。そこには、経営者が知っておくべき戦略的思考の神髄がありました。
【目次】
- 1. 最初のレバレッジポイント:『忙しさ』の正体を暴き、余白を作る
- 2. 知性のレバレッジ:『作る人』を『届ける人』へ再定義する
- 3. 最大の急所:赤字撤退という『不義理』の先にある未来
- 4. レバレッジは『仕組み』ではなく『姿勢』に宿る
- 5. 覚悟を形にするプロセス——レバレッジポイントの見つけ方
1. 最初のレバレッジポイント:『忙しさ』の正体を暴き、余白を作る
着任当初、組織は慢性的な疲弊という深い霧の中にありました。メンバーは一様に「忙しい」と口にしますが、その実態はブラックボックス化していました。
A氏が最初に見つけたレバレッジポイントは、「個人のスケジュール」でした。 彼は「もっと頑張れ」とは言わず、代わりに「徹底的な可視化」という沈黙の武器を振るいました。
全員の1週間の動きを白日の下にさらし、「これは今やる必要があるか?」と一つひとつの業務に問いを立てる。それは単なる効率化ではなく、思考を占拠していた「ノイズ」を消し去り、本質に向き合うための「余白」を強制的に作り出す作業でした。
この「余白」こそが、次に打つべき大きな一手を支える、最初の土台(支点)となったのです。
2. 知性のレバレッジ:『作る人』を『届ける人』へ再定義する
次に彼が挑んだのは、技術部門と営業・マーケティング部門の間に横たわる「深い溝」でした。
「良いものを作れば売れる」という職人気質の伝統は、時に市場の変化を遮断する壁になります。A氏は、技術者をマーケティング会議の最前線に立たせました。 「自分たちが削っているこの1ミクロンが、誰の、どんな笑顔に繋がっているのか」を体感させたのです。
これは単なる役割の変更ではありません。職人のプライドを「顧客を勝たせる」というプロフェッショナリズムへ「リフレーミング(再定義)」するという、知性のレバレッジでした。
このマインドセットの転換が、現場から自発的な提案が溢れ出す最大の原動力となりました。
3. 最大の急所:赤字撤退という『不義理』の先にある未来
そして、彼の在任中で最も大きな「レバレッジポイント」を叩く時が来ました。長年手がけてきた不採算部品からの、戦略的な撤退です。
「不義理になる」「現場が混乱する」。そんな感情的なブレーキを乗り越え、彼は決断しました。しかし、その決断の仕方は極めて誠実でした。
クライアントの生産を止めないよう、自ら足で歩いてノウハウを引き継ぐ先を手配する。「自分たちがもっと先へ進むための、前向きな別れだ」と工場でビジョンを語り続ける。泥をかぶりながら逃げずに向き合うリーダーの姿に、現場の空気は「諦め」から「覚悟」へと一変しました。
この、組織全体のエネルギーを一点に集中させる「決断」こそが、真のレバレッジポイントを叩くということなのです。
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4. レバレッジは『仕組み』ではなく『姿勢』に宿る
A氏が去った今も、その組織は自律的に動き続けています。 かつて「忙しい」と下を向いていたメンバーたちが、今や事業の未来を語り、現場から次々と改善案が上がる。
それは彼が、高価なITツールや複雑なマニュアルを遺したからではありません。「守るべきものは守り、捨てるべきものは捨てる」という、リーダーとしての『姿勢』を遺したからです。
リーダーがどこを向き、どのレバレッジを叩くのか。その背中こそが、組織が自律走行するための最強のインフラになるのです。
5. 覚悟を形にするプロセス——レバレッジポイントの見つけ方
私がA氏との仕事を通じて確信したのは、組織変革に「魔法」はないが、「急所(レバレッジポイント)」は必ず存在するということです。
スケジュールの可視化も、顧客との対話も、赤字からの撤退も、どれも地味で痛みを伴う作業です。しかし、そこが「急所」であると見極め、信じて叩き続けるリーダーの覚悟があれば、組織は必ず変わります。
私たちが支援できるのは、その「どこを叩けば組織が変わるのか」というレバレッジポイントを特定し、覚悟を形にするプロセスです。
誰にも言えない孤独を抱えながら、組織のレバレッジポイントを探し続けている経営者・リーダーの皆様へ。
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執筆者プロフィール
寺澤 のぞみ / 株式会社Nuevo Lab 代表取締役
浜松・静岡・愛知を中心に、多くの経営者の「孤独な決断」に寄り添ってきた伴走型パートナー。成人発達理論とレバレッジポイント思考を武器に、経営者の抽象的なビジョンを具体的な「組織の物語」へと翻訳する。経営者にとって最も信頼できる「知的なスパーリングパートナー」として活動中。







