静岡県内には、世界に誇る技術力を持つ製造企業が数多く存在します。しかし、多くの現場で共通の課題となっているのが、熟練技能者の退職に伴う「技能承継」です。ベテラン社員の頭の中にある「勘」や「コツ」は、言葉にできない「暗黙知」として留まっており、これが解消されないままの「属人化(ぞくじんか)」が組織の成長を阻む大きなリスクとなっています。
この課題を解決し、個人の知恵を組織全体の資産へと昇華させるための強力なフレームワークが「SECI(セキ)モデル」です。ここでは、東海の組織文化に合わせた実践的な3ステップを解説します。

ステップ1:共同化(Socialization)—— 現場の「空気」を共に吸う
最初のステップは、言葉による説明の前に、ベテランと若手が同じ時間を共有し、身体感覚を共にすることから始まります。
現場での対話: 単なる作業の観察に留まらず、何気ない雑談や一緒に手を動かすプロセスを通じて、ベテランのこだわりや感覚を共有します。
共感の醸成: 相手の背景や創業メンバーのオリジナルな意図を尊重する姿勢が、知識を受け取るための良好な人間関係を築く土台となります。
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ステップ2:表出化(Externalization)—— 「遊び心」で暗黙知を言葉にする
共有された主観的な感覚を、図解や言葉などの客観的な「形式知」へと変換するプロセスです。
対話による言語化: 「なぜこのタイミングで音を確認したのか?」といった問いを立て、対話を通じて無意識の行動を言葉に落とし込みます。
遊び心の導入: 効率や正解だけを求めるのではなく、自由な発想や「遊び心」を取り入れることで、既存のフレームワークに囚われない新しい表現や気づきが生まれます。
建設的な衝突の活用: 和を尊ぶあまり異論を避けるのではなく、異なる視点を戦わせることで、技術の本質をより深く定義し直します。
ステップ3:連結化と内面化(Combination & Internalization)—— 組織の仕組みとして定着させる
最後は、言語化された知識を体系化し、組織全体で実践するステップです。
知の統合: 個々のノウハウをマニュアルや評価制度に組み込み、誰もがアクセスできる組織の資産へと整理します。
実践による血肉化: 体系化された知識を現場で繰り返し実践し、個人の新たなスキル(暗黙知)として体得します。
組織への接続: 個人の成長を単独で終わらせず、対話を通じて組織全体の目標やインパクトへと繋げることで、持続的な変革を実現します。
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伝統を次代へ繋ぎ、自走する組織へ
技能承継の本質は、単なる情報の伝達ではありません。確立された文化や創業者の想いを大切にしながら、それを現代の時代環境に合わせて適応・保存していくプロセスです。
静岡の製造業が持つ誠実な文化を土台にしつつ、思考の枠を外す「遊び心」と「建設的な対話」を取り入れること。経営層が現場の伴走者となり、このSECIモデルのスパイラルを回し続けることで、属人化していた「個の技」は、未来を切り拓く「自走する組織の力」へと変わります。
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