「会社は一緒になった。でも、現場は別々の会社のままだ。」

会議では、同じ方針を確認している。 それなのに、仕事の進め方が噛み合わない。 以前の会社ごとに人が固まり、判断は経営者に戻ってくる。

M&A後にこうした状況が起きたとき、社員の意識だけを変えようとしても、解決は難しいかもしれません。

会社ごとに、「何を大切にするか」「誰が決めるか」「何を評価するか」が違うからです。

PMI(Post Merger Integration)とは、M&A後に経営や業務をつなぎ、期待した価値を実現するための取り組みです。中小企業庁のガイドラインでも、経営統合・信頼関係構築・業務統合の三つの領域が整理されています。[1]

Nuevo Labが、その土台として重視するのが、組織OSを確かめ、共通の判断軸をつくることです。

東海のPMIで、現場の強みをどう引き継ぐか

静岡・愛知・岐阜・三重で、事業承継やM&Aを考える経営者にとって、引き継ぐ対象は設備や売上だけではありません。

技術者の判断、改善の積み重ね、お客様との信頼関係。 数字やマニュアルだけでは捉えきれない強みもあります。

中部経済産業局は、自動車産業のCASE対応に向けた事業転換をテーマに、M&A戦略のワークショップを開催してきました。M&Aは、事業を引き継ぐだけでなく、変化に対応する選択肢にもなっています。[2]

そのときに問われるのは、引き継いだ強みを、次の成長にどうつなげるかです。

買い手側のやり方を広げる前に、現場で何が価値を生んでいるのかを確かめる。そのうえで、共に目指す方向と、仕事をつなぐルールを整えることが必要です。

同じ「任せる」でも、意味が違う

たとえば、二つの会社が統合する場面を考えてみます。

一方では、上司に相談してから動くことが信頼につながっていた。 もう一方では、現場で判断し、素早く動くことが評価されていた。

統合後に「もっと主体的に動いてほしい」と伝えても、前者の社員にとっては「勝手に進めてよいのか」という不安が残ります。

反対に、承認を増やせば、後者の社員は「これまでの強みを否定された」と感じるかもしれません。

これは、考え方の違いを説明するための例です。同じ言葉でも、その会社で身につけてきた前提によって、受け止め方は変わります。

Nuevo Labでは、こうした暗黙のルールや判断の前提、対話のあり方を、組織を動かす「組織OS」と捉えています。[3]

組織OSを揃えるとは、それぞれの個性を消すことではありません。共に仕事をするときに、何を基準に判断し、どう連携するかを、互いにわかる状態にすることです。

出発点は、「一緒になって何を実現するのか」

統合の目的を「売上拡大」「効率化」と説明するだけでは、社員は自分の仕事とのつながりを掴みにくいものです。

どのお客様に、どんな価値を届けたいのか。 それぞれの会社の、どの強みを組み合わせるのか。 これからも守るものと、変える必要があるものは何か。

経営者の構想と、現場の経験を持ち寄り、この問いを具体的にしていきます。

経営者は、統合によって実現したい未来を語る。 現場は、お客様に選ばれてきた理由や、仕事で大切にしてきたことを語る。

その両方から共通の軸をつくることで、「決まった方針に従う」だけでなく、「自分たちの強みを、この未来に活かしたい」という参加の理由が生まれます。

ただし、対話や理念づくりだけでPMIが完了するわけではありません。資金管理や法令対応、品質・安全など、早期に整えるべき事項は並行して進めます。

共通の軸を、日々の判断に落とし込む

理念を共有した後、以前と同じ基準で提案を却下していれば、現場は変わりません。

共通の軸は、権限や会議、評価とつながって初めて、仕事を動かす力になります。

整えること 具体的に決めること
判断の基準 品質・納期・採算がぶつかったとき、何を優先し、誰に相談するか
権限と責任 現場で決められる範囲と、経営判断が必要な範囲
連携のルール 両社をまたぐ案件の責任者、情報の渡し方、問題が起きたときの相談先
評価の基準 自社の数字に加え、他拠点への協力や技術共有をどう扱うか

ここで大切なのは、現場に判断を求めるなら、経営者もその基準で判断することです。

合意した範囲で任せた仕事に、後から別の基準で口を出し続ければ、社員は再び承認を待つようになります。基準を変える必要があるときは、その理由まで共有する。それが、任せられる組織への土台になります。

ユニーの取り組みから考える、理念と仕組みのつながり

PPIHの2020年統合報告書では、ユニーが培ってきた人材育成の知見を活かしながら、グループの企業原理・理念を浸透させる取り組みが紹介されています。

同時に、個店経営への転換に合わせ、社員やパート・アルバイトの評価制度も変更しています。[4]

この事例から読み取れるのは、共通の理念を伝えることと、その理念に沿って働ける仕組みを整えることを、つなげて考える必要性です。

理念だけを掲げても、権限や評価が以前のままでは、現場は動きにくい。反対に、制度だけを変えても、なぜ変えるのかが伝わらなければ、納得は生まれにくいのです。

最初の一歩は、両社で一つの仕事を動かすこと

共通の軸が見えてきたら、両社で取り組める具体的な課題を一つ選びます。

たとえば、見積もりの回答を早める。 拠点間で改善の知見を共有する。 お客様からの相談を、両社の技術を組み合わせた提案につなげる。

担当者と判断の範囲を決め、現場で試す。 何が進み、どこで止まったのかを振り返り、ルールを調整する。

成果を確かめるときは、売上や利益に加え、回答時間、手戻り、連携の停滞など、その取り組みで変えたい指標も見ていきます。

対話で確かめ、仕組みに落とし、実際の仕事で検証する。この積み重ねで、共通の軸を使えるものにしていきます。

引き継いだ強みを、共に成長する力へ

東海のPMIで目指したいのは、それぞれの会社が築いてきた強みを、統合後の価値につなげることです。

そのために、経営者の想いを言葉にする。 現場が大切にしてきたことを確かめる。 共通の軸を、判断と行動を支える仕組みにする。

Nuevo Labは、人材・組織・事業の三つの視点から、こうした課題のつながりを捉え、必要な打ち手を共に考えます。

「一緒になったのに、会社が動き出さない。」 「何を揃え、何を残すべきか、整理したい。」

その違和感を言葉にするところから、次の一手を考えてみませんか。

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参考資料

  1. 中小企業庁「PMIを実施する」
  2. 中部経済産業局「CASE対応に向けた事業転換におけるM&A戦略ワークショップ」(2024年)
  3. Nuevo Lab「組織OSとは?研修や制度だけでは変わらない職場の土台」
  4. PPIH「統合報告書2020:ビジネスモデル」

※ユニーの事例は公開資料に基づく紹介であり、Nuevo Labの支援実績を示すものではありません。