「半年かけて、また焼き直しか」
食品メーカーの新商品開発担当者から、こういう言葉をよく聞く。
「企画会議に出すたびに、役員の好みで方向性がひっくり返る」 「SNSのトレンドや消費者レビューは山ほどあるのに、どう使えばいいかわからない」 「結局、安全牌を選ぶしかなくなって、既存商品の味違いになってしまう」
半年、時には1年。社内の調整と根回しに費やして出てきたものが、棚に並んだ同ジャンルの3番手商品だった——そんな経験を持つ担当者は少なくない。
これは「企画力」の問題ではない。構造の問題だ。
なぜ、老舗ほど新商品が生まれにくいのか
老舗食品メーカーには、長年かけて積み上げてきた「勝ちパターン」がある。製造ラインの制約、販路の慣習、ブランドイメージへの配慮——そのすべてが、暗黙の「選別フィルター」として機能している。
企画会議に持ち込まれたアイデアは、この複数のフィルターを通過するたびに削られていく。最後に残るのは、誰も反対しない、誰もワクワクしないアイデアだ。
「反対されない企画」と「売れる企画」は、まったく別物だ。
もう一つの問題がある。消費者データの活用だ。SNSには毎日、商品への生の声が積み上がる。レビューサイトには「もっとこうであれば」という切実な不満が眠っている。しかしそのデータを分析する時間も人手もなく、感覚と過去の成功体験だけで企画会議が回り続ける。
AIは「企画会議の構造」を変える
ここ1〜2年で、この状況を変えるツールが現場に届き始めた。LLM(大規模言語モデル)を活用したデータ分析だ。
かつて専門家チームが数週間かけていた作業が、数時間でできるようになっている。
① 消費者データの瞬時クラスタリング
SNS投稿・ECレビュー・口コミサイトのテキストデータをLLMに読み込ませると、消費者の「不満の構造」が浮かび上がる。「甘すぎる」「量が少ない」という表面的な不満の奥に、「罪悪感なく食べたい」「特別な日に使いたい」というインサイトが見えてくる。これが新商品のコンセプト設計の出発点になる。
② 自社の製造技術・特許データとの掛け合わせ
市場インサイトだけでは企画にならない。「うちに作れるか」がなければ絵に描いた餅だ。自社が持つ製造技術・素材・特許情報をAIに整理させ、消費者インサイトと照合する。「このニーズに、うちのこの技術で応えられないか」——この掛け合わせから、競合が簡単に真似できない企画の芽が出る。
③ コンセプト・パッケージ・LP案の短時間可視化
コンセプトが固まれば、パッケージデザインのラフ案もLP(ランディングページ)のコピー案も、AIと人間の協働で数時間のうちに形にできる。「言葉だけの企画書」ではなく、見て触れる形にすることで、役員会での反応が変わる。
「爆速アイデアソン」という突破口
私たちがPROTOCORE株式会社と取り組んでいるのが、この一連のプロセスを1日に圧縮した「爆速アイデアソン」だ。
PROTOCOREは「AI×新規事業開発・事業創造」を専門とするチームで、アイデア創出からUX設計、AIプロダクトの最短市場検証まで一気通貫で支援している。Nuevo Labが組織の土台(OS)を整える伴走をするなら、PROTOCOREは企画を高速で形にする実装力を持つ。
この夏、私たちは合同で「AI爆速アイデアソン」を開催した。参加者は企画担当者・マーケター・現場スタッフ、業種も様々。4時間のワークショップで、全員がコンセプトからパッケージ案・LP案まで持ち帰った。
「半年かけてできなかったことが、今日の午後に形になった」
参加者からそういう声が出たとき、これは研修でも勉強会でもなく、「仕事そのものだ」と確信した。
「データがある」から、役員会を突破できる
新しい企画が社内で潰れる最大の理由は、「根拠がない」ことだ。
「なんとなく流行っている気がする」「消費者に聞いたら良いと言っていた」——これでは保守的な役員は動かない。
AIによる市場分析が変えるのは、ここだ。
「このカテゴリーの消費者レビュー2万件を分析した結果、"罪悪感なく食べたい"というニーズが全体の38%を占めており、現在の市場には直接応える商品が存在しない」——この一文があるだけで、会議の空気が変わる。
感覚の戦いを、データの議論に変える。これが「AIを使った企画の通し方」の本質だ。
企画のアイデアは人間が出す。「なぜこれが売れるか」の根拠をAIが補強する。そして役員会では、データを盾に議論の土俵を変える。この役割分担が機能したとき、半年の会議が不要になる。
大事なのは、ツールではなく「問いの立て方」だ
AIのツールは増え続けている。しかし現場を見ていると、ツールを導入しても使いこなせない企業の共通点がある。
問いの立て方が変わっていないのだ。
「売れる商品を作れ」という問いのままAIを使うと、AIは過去の売れ筋データをもとに「平均的な正解」を出す。それは既存品の焼き直しと変わらない。
問いを変える。「今の消費者が言葉にできていない不満は何か」「うちの技術でしか作れないものは何か」——この問いをAIにぶつけると、まったく違う景色が見えてくる。
道具は変わった。問いを立てるのは、まだ人間だ。
最後に
老舗食品メーカーには、長年の製造技術と顧客との信頼という「本物の強み」がある。その強みを市場インサイトと掛け合わせ、スピードを持って形にする——それが今、AIによって初めて現実になりつつある。
「うちの会社でもできるのか」と感じた方に、まず30分話してほしい。
あなたの会社が持っている技術と、消費者が言葉にできていない不満の「交差点」を、一緒に探す。
新規事業・新商品開発のアイデアソン導入について、詳しくはこちら。
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この記事を書いた人
寺澤 のぞみ / 株式会社Nuevo Lab 代表取締役
静岡・東海エリアを中心に、100社以上の組織開発を伴走支援。PROTOCORE株式会社とのパートナーシップにより、AI×新規事業開発のワークショップ・研修を東海から展開中。






