「若手が早く仕事を覚え、長く活躍できるようにしたい。静岡のほかの企業は、どんな育成をしているのだろう。」
社員研修を検討するとき、近隣企業の事例は参考になります。ただし、研修の名前や日数だけをまねても、自社の課題に合うとは限りません。
この記事では、静岡県内に本社・本拠を置く3社について、行政・支援機関の公開資料と、研修提供者による企業担当者へのインタビューを調べました。何を行ったか、どんな変化が報告されたか、何はまだ分からないかを分けて紹介します。
情報の確認日は2026年11月3日です。紹介する3社の取り組みは、Nuevo Labの支援実績ではありません。公開資料に基づく調査記事であり、当社が各社へ独自に取材したものではありません。トップ画像はイメージイラストです。
「成功事例」を読む前に、成果の種類を分ける
今回確認した資料では、離職が減ったという担当者の評価はありました。一方、若手の離職率が何%から何%になったか、独り立ちまでの日数がどれだけ短くなったかを比較できる数値は確認できませんでした。
そこで、成果を次の3つに分けて読みます。
- 行動・能力の変化:どんな仕事を、どの程度の支援でできるようになったか。
- 成長や定着を支える体制の変化:育成の担当、面談、学ぶ順序などが整ったか。
- 定着の結果:対象者と期間をそろえて、在籍・離職の状況がどう変わったか。
体制が整ったことと、離職率が下がったことは、異なる成果です。また、離職には仕事内容、待遇、配置、上司との関係なども関わります。研修の導入後に変化があっても、研修だけの効果とは断定できません。
事例1:東海澱粉――入社時の研修と、配属後の相談機会を組み合わせる
公開資料で確認できたこと
静岡県の令和7年度セミナー報告では、東海澱粉の若手離職対策として、新入社員研修を1か月に延ばし、社内のつながりづくりを進めたことが紹介されています。人事による3か月ごとの1on1で、個別の悩みをフォローする取り組みも掲載されています。
この資料には、離職率の改善幅や、仕事の習得速度の比較値は示されていません。 確認できるのは、導入時の研修と継続的な面談を組み合わせているという取り組みです。
出典:静岡県「令和7年度ダイバーシティ経営導入推進セミナー」東海澱粉の事例
自社で考えたいこと
この事例から、研修の後に生まれる疑問や悩みを、誰が受け止めるかも検討できます。
入社時には説明を理解していても、実際に仕事を始めてから困ることがあります。研修の担当者と配属先の上司が別なら、配属後の様子が研修側に届かないこともあるでしょう。
自社では、次の点を確認してみてください。
- 配属後に困ったとき、若手が相談できる相手は明確か。
- 定期面談で出た困りごとを、必要な業務支援につなげられるか。
- 面談の間隔を、対象者の経験や状況に合わせて考えているか。
他社と同じ周期にすることより、困ったまま待たせない体制を考えることが出発点です。
事例2:トヨタユナイテッド静岡――同期同士の関係づくりを研修の目的にする
公開資料で確認できたこと
研修提供者JOWAの導入事例では、トヨタユナイテッド静岡が、新入社員の同期同士の関係づくりを目的に、体験型研修を導入した経緯が紹介されています。企業の人事担当者は、2015年度の導入以降、退職する人が減ったと評価しています。
ただし、これは研修提供者が掲載する担当者インタビューによる評価です。離職率の前後比較、対象人数、集計期間、ほかの施策の影響は確認できません。したがって、研修による離職率低下が数値で実証された事例とは扱いません。
自社で考えたいこと
新人研修で育てたいものには、知識や技能に加えて、一緒に働く人へ質問し、協力を求める関係もあります。
自社で体験型研修を検討するなら、「楽しかったか」だけで終えず、そこで生まれた関係を日常業務でどう使えるようにするかを考えます。
例えば、配属後にも同期で経験を共有する場を設ける。困ったときに相談する相手を確認する。研修で協力した経験を振り返り、職場で試す行動を決める。これらは、本記事からの検討案です。同社がすべて実施しているという意味ではありません。
また、新卒採用が少人数の企業では、同じ規模の同期研修を再現しにくい場合もあります。対象人数や職場の条件を踏まえ、どんな関係づくりが必要かから検討します。
事例3:イシダテック――現場任せの育成から、入社後の成長プロセスを整える
公開資料で確認できたこと
中小機構の人材確保ノウハウ集中支援事業では、焼津市のイシダテックが、属人的な教育を見直し、入社後の受け入れ・育成と対話の仕組みを設計した事例が紹介されています。支援では、3か月・6か月・1年の節目と、育成の責任分担を整理しています。
公開資料では、育成に関わる人の目的意識や、進めるべきことが明確になった変化が報告されています。一方、離職率低下や早期戦力化の実績数値は示されていません。 育成体制の設計・整備が進んだ事例として読むことができます。
出典:中小機構「人材確保ノウハウ集中支援事業」イシダテックの事例
自社で考えたいこと
「若手がなかなか育たない」という相談を、本人の意欲だけで説明する前に、職場が期待している姿を確かめます。
例えば、入社後のある時点で「一人でできてほしい仕事」と「まだ確認を受けて進める仕事」を分ける。教える人と、状況を見て支援を決める人を明らかにする。本人にも、次に何を学ぶかが見えるようにする。
これは当社からの整理案です。育成計画を作るときは、項目を増やすだけでなく、現場の担当者が使える時間と、振り返る機会を確保できるかも確認したいところです。
早期成長と離職率低下を、自社では何で確かめるか
今回の3社は、業種や規模も、公開されている成果の種類も異なります。優劣をつけたり、一つの研修方法に共通の効果があると結論づけたりすることはできません。
自社で成果を確かめるには、研修を選ぶ前に「何が変わってほしいか」を決めておきます。以下は、測り方を考えるための例です。紹介企業が使っている指標ではありません。
| 確かめたいこと | 観察・記録する例 |
|---|---|
| 仕事を覚えているか | 同じ難易度の業務を、どの程度の確認・支援で進められるか |
| 困ったときに相談できるか | 実際に困った場面で、誰へ何を伝え、どんな支援を受けたか |
| 学んだことを仕事で使えたか | 試した行動、難しかった条件、次に必要な支援 |
| 職場に定着しているか | 入社時期や対象者をそろえた在籍・離職の人数と、その背景 |
独り立ちの早さを見る場合も、担当する仕事の難しさや、経験、配属条件をそろえずに比べると解釈が難しくなります。早く任せることだけを目標にして、必要な確認を省かないようにします。
また、少人数の採用では、一人の離職で率が大きく変わります。離職率だけで判断せず、対象人数と期間を併記し、本人が話せる範囲で理由や職場の状況も確認します。面談の内容は、共有範囲と本人への説明にも配慮して扱います。
静岡で若手社員研修を選ぶとき、先に整理したいこと
事例を参考にするときは、「あの研修を入れるか」から一歩戻り、自社で困っている場面を挙げてみてください。
- 仕事の目的や期待役割が分からず、動き出せないのか。
- 質問・相談の仕方を練習する機会が必要なのか。
- 若手同士や上司との関係づくりが課題なのか。
- 教える担当や、配属後のフォローが決まっていないのか。
知識や行動の練習は研修で扱い、業務量や権限、相談体制などは職場で整える。この両方を検討すると、依頼する内容も具体的になります。
訪問型の研修を依頼する場合は、実施場所、参加人数、勤務シフト、扱える題材、実施後のフォロー範囲も確認しましょう。静岡の企業という共通点があっても、それぞれの現場条件は異なります。
若手の成長を、研修と職場の両方から考えたい方へ
Nuevo Labの若手社員研修では、仕事の全体像と期待役割を捉え、質問・傾聴、課題発見、上司への提案を通じて、職場で試す行動を具体化します。
新入社員の導入・フォローアップや、育成する側の関わり方も含め、対象者の経験と現場の課題に合わせて内容をご提案します。離職率の低下や早期成長を保証するものではなく、目指す行動と実施範囲を事前にすり合わせます。
静岡を拠点に、愛知をはじめ東海エリアを中心に全国対応。研修のテーマが決まる前でも、現在困っている場面からご相談いただけます。
あわせて読みたい
参考資料について
各事例のリンク先は2026年11月3日に確認しました。記述は各資料に掲載された時点の取り組み・評価に基づきます。現在の全社的な運用状況、紹介施策以外の影響、最新の離職率は未確認です。
本社所在地の確認:東海澱粉 企業情報、トヨタユナイテッド静岡 会社概要。イシダテックの所在地は上記の中小機構事例に掲載されています。





